当社は、2024年6月19日(水)から21日(金)にかけて東京ビッグサイトで開催された「第2回ものづくりODM/EMS展」に、出展いたしました。今年も、OKI EMSグループ4社(OKI EMS事業部、OKIネクステック、OKIシンフォテック、そして私たちOKIアイディエス)が連携しブースを構えました。主催者の発表によると、3日間の会期中に合計69,717名の来場者が訪れ、大盛況となりました。また、会場は東京ビッグサイトの東ホールと南ホールに分かれており、1,978社もの企業が出展していました。当社が出展していた東ホールには、部品や設備、製造技術を紹介する企業が多数集まりました。
会期3日目。あいにくの雨でしたが多くの方が来場くださいました。
OKI-EMSグループはEMS(設計・製造受託サービス)を展開しております。OKI-EMSブースにおいて、「建設・防災・インフラ」、「産業・FAロボット」、「半導体検査装置」、「医療機器」、そして「宇宙」といった幅広い分野の最新技術と製品ラインナップを中心に展示し、多くの来場者から高い関心を引きました。ご多忙の中、当社ブースにお立ち寄りいただき、説明を聞いてくださった皆様に心より御礼申し上げます。
OKIブースの様子
私たちOKIアイディエスは、設計・開発サービスを担うOKI-EMSグループの一員として、展示会に参画いたしました。ChatGPTをはじめとする生成AIが急速に私たちの生活に浸透するなど、「AI」は依然として注目の的です。OKIアイディエスでは、「AIを組み込んだ装置開発を行いたい」というご要望を具現化するために、昨年に引き続き「AI」に関連する技術を展示・紹介しました。多くの来場者にご覧いただき、多くの方に熱心にご説明を聞いていただくことができ、具体的なご質問やご相談をいただくことができました。
具体的な展示内容をご紹介しましょう。
昨年に引き続き、ロボットハンドを活用した「じゃんけんAI」のデモをブラッシュアップして展示させていただきました。私たちは「AIを導入する」こと自体が目的ではなく、「課題が何で、その課題はAIで解決できるのか」、そして「AIを導入することで、何ができるようになるのか」が重要だと考えています。たとえば、「外観検査」、「異常検出」などの用途でAIを活用し、異常を検出、アラートを出すといった事例は、よく聞かれる事例です。
わたしたちが開発した「じゃんけんAI」のデモは、カメラの前にグー、チョキ、パーを出すと、AIが手の形を瞬時に認識し、それに勝つ手を一瞬で出します。まさにデモのタイトルにもした「わたし絶対に負けません!」を体感いただきました(笑)。そんなシンプルなAIデモは、AI活用の大きな可能性を感じさせてくれたと思います。
元々「機械要素展」として開催されていた展示会ですので、AIに興味がないお客様でも、ロボットハンドのモーターやケーブルなどの部品に注目してくださる方も多くいらっしゃいました。お立ち寄りいただいたことをきっかけにAIに関心を持っていただくこともできました。
OKIアイディエスのブースレイアウト
お客様とじゃんけんをして、私たち(ロボットハンド)が必ず勝つというシンプルなデモです。
USBカメラ、ロボットハンド、AIエッジ向けのデバイス「Kria™ K260(AMD社製)」のみで構成されています。モニターはAI推論の状況を見ていただくために設置しています。
デモの様子
デモ構成図
出力1:「ハンドサイン分類」した結果をモニターに出力。
⇒お客様が出した手(「グー、チョキ、パー」)をAI推論、つまりAIで予想した結果を表示します。
出力2:「ハンドサイン分類」した結果から、お客様に勝てるよう「ロボットハンド」を動かします。
「KR260™」にてPWM制御を行い、「ロボットアーム」のサーボモーターをコントロールします。
⇒上記構成図では、映像入力が「グー」なので、勝つために「ロボットハンド」を「パー」の形にします。
昨年に引き続き、ロボットハンドを活用したじゃんけんAIのデモですが、負けず嫌いな入社3年目の若手メンバーたちがさらなる改良を行いました。昨年は『後出しじゃん!』と言われることもありましたが、今年はAIの認識精度とロボットハンドの応答性が大幅に向上し、そんなことは言わせません!
学習用のデータセットを刷新しました。グー・チョキ・パーの画像をそれぞれ500枚ずつ作成し、画像の回転や背景の加工を加えました。低リソースのAIエッジデバイスにも搭載できるよう、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は4層の畳み込み層で構成しました。
これにより、お客様によって手の出し方に個人差がある場合でも、認識率が向上しました。推論速度評価では、1036フレーム毎秒(FPS)を記録し、非常に高い性能を実現しました。
ロボットの制御にROS2(Robot OS 2)を採用しました。ROS2は、ロボット開発のために必要な一連のライブラリやツールなどを集約したソフトウェアのプラットフォームです。これにより、AI推論とロボット制御を並列で行うことができ、ロボットハンドの応答性が格段に向上しました。さらに、ROS2対応アプリケーションとの連携が可能になり、システムの拡張性が高まりました。
また、AI推論結果が曖昧なときには、ロボットハンドをグーとパーの中間状態のような手の形となる制御を加えています。これにより、AI推論結果が確定した時点で、即座に適切な手を出せるようになり、スムーズな動作が実現しました。
当社には、メカ、エレキのハード系設計者が揃っており、実装技術も有しています。今回の展示では、この後紹介するOKIマイクロ技研社製の超小型高トルクブラシレスDCモーター「サムベリーナ」のコンパクトさをアピールするために、ロボットハンドの手の平に1基、手の甲に4基と最適な配置を行いました。これにより、人間の手の骨格に近い見た目に仕上げることができました。
また、煩雑になりがちな配線ルートに関しても、メカとエレキが協調することで、スマートに仕上げています。これにより、組み立て作業の効率が向上し、メンテナンスも容易になりました。
♦ 超小型高トルクブラシレスDCモーター「サムベリーナ」(OKIマイクロ技研)
OKIマイクロ技研社製の超小型高トルクブラシレスDCモーター「サムベリーナ」を各指に1基ずつ搭載しました。「サムベリーナ」は、直径12mm全長25.5mmと小型でありながら、トルク定数13×10-3N・m/Aを実現したモーターです。また、インナーロータ―型の特性でもある高応答性により、高精度かつ応答性の高い動作を実現しました。
♦ ロボット向けケーブル「ORP-SL」(OKI電線)
電源からモーターへ信号を伝送するケーブルには、OKI電線のロボット向けケーブル「ORP-SL」を採用しました。OKI電線が独自に開発したエラストマー絶縁材料を使用したFAロボットケーブルです。同社従来品に比べて最大30%細径化しつつ、高い可動耐久性を両立しています。産業用ロボットや工作機械など、屈曲や摺動などあらゆる機器の動きに対応可能です。
AI技術が日常生活にますます浸透し、その開発プロセスについて疑問や課題を抱える方も多いのではないでしょうか。当社では、AI開発を推進するための具体的なフローを明確にし、お客様のニーズに応えるサービスを提供しています。
今回の展示会でも、多くの方が「上司から “うちもAIで何かできるだろ”と言われたが、何をどう始めて良いかわからない」、「AIを搭載した商品を開発したいが、具体的な方法が分からない」といった悩みを抱えられていました。
ブースには、従来の製品開発プロセスに加えてAI特有の開発ステップを示した図を展示し、これに基づいて具体的な説明を行いました。お客様の現状を伺いながら、適切なアプローチを提案することで、多くの方にご納得いただけました。
AI開発は各プロセスに特化した業態でサービスが展開されており、システム全体の課題を把握し、適切にAIを組み込むための知識と技術を持ったインテグレーターが求められています。
当社は、AIパートナーシップを通じ、各企業との協業形態を持ちながら、お客様の製品化を見据えた「AI搭載機器の商品開発」をサポートしています。この取り組みにより、AI技術を効果的に活用し、お客様のビジネスの競争力を高めることを目指しています。
現在、AI分野で注目されている技術の一つに「AIモデルの軽量化」があります。AIで実現したいことが日に日に複雑化する中で、そのリソースの要求も大きくなります。一方で、「エッジ化」のニーズも増加しており、システムをコンパクトに保ちたいという要望が高まっています。これに伴い、「AIモデルの軽量化」に対する関心が高まっているのです。当社もこの技術に力を入れて取り組んでいます。
当社が保有するAIモデル軽量化の技術は、「PCAS(Pruning Channels with Attention Statistics)」と呼んでいます。PCASは、モデルプルーニング技術の一種で、AIモデル内に存在する不必要な演算(ニューロン)を特定・削減します。小型モデルの挿入・最適化に基づいて、軽量化対象の各畳み込みレイヤーを含むニューロンの重要度の推定、および削減を行うことで、認識精度を最大限維持しつつ、効果的にモデルを軽量化します。その結果、推論処理の高速化とメモリー使用量/消費電力の低減 を実現します。
AIモデル軽量化「PCAS」のイメージ
これまで当社では、お客様のAIモデルをお預かりして軽量化を行い、納品するというサービスを提供していました。しかし、多くのお客様から「AIモデルは渡したくない」「自分たちでパラメータ評価を行いたい」といった声が寄せられました。そこで、「PCAS」をお客様自身でもご利用いただけるようにツール化いたしました。AIモデルの軽量化をお考えの方、またはご興味のある方は、ぜひご相談ください。
OKI-EMSグループが注力している新たなフロンティア、それが“宇宙”です。今回の展示会のブースでは、巨大サイネージを用いて、今年2月に打ち上げ成功したH3ロケット試験2号機の映像をご覧いただいておりました。このH3ロケットには、EMSグループのOKIサーキットテクノロジーが製造した基板が多く搭載されていました。
OKI-EMSグループの各社は、独自のコア技術を多数持っており、その技術を連携させることで、お客様の課題を解決する新たな仕組みを構築しています。私たちは特に、設計・開発の立場から「シミュレーション技術」を活用することが重要であると考えています。
「宇宙」という特殊な環境をどのように地上で再現し、検証するかが大きな課題です。たとえば、宇宙空間は空気が存在しない「真空」の状態です。この「真空」状態では、地上とは異なる熱挙動が起こります。シミュレーション技術を駆使してこのような環境を再現し、検証を行うことで、試作回数の削減や開発期間の短縮につなげることが可能と考えています。
このような取り組みにより、OKI-EMSグループはお客様の多様なニーズに応えるための先進的なソリューションを提供し続けています。これからも「宇宙」という未知の領域での挑戦を続けることで、新たな価値を創出し、技術革新を推進してまいります。
OKI-EMSグループの各社は、それぞれ独自の尖った技術を持っています。たとえば、OKIマイクロ技研の小型モーター「サムベリーナ」、OKI電線の高品質ケーブル、そして設計開発を担うOKIアイディエス。これら各社の特徴や強みを組み合わせ、今回の展示会では「じゃんけんAIデモ」を通じてご紹介させていただきました。AI技術、実装設計、モーター、ロボットケーブルなど、多岐にわたる技術要素に注目いただけたと思います。多くの方々に、各社の高い技術力が結集した成果を実際に体感していただけたと感じています。
今回のデモ開発は、入社3年目のメンバーたちが担当しました。彼らは、改良設計のプロセスを経験し、自分たちが作り出したものが実際にお客様にどう評価されるのかを直接感じることができました。この貴重な経験が、今後のお客様向け開発業務に役立つことを期待しています。
最後になりますが、ご来場くださったお客様に心より感謝申し上げます。本展示やデモに関するご質問やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
デモ開発を行った3年目のメンバー(左からソフト、メカ、AI、エレキの設計者)
ご来場ありがとうございました
本展示、デモに関するご質問、ご相談ございましたら、お気軽にお問い合わせください。