ネットワークカメラの業界標準!ONVIF規格とは?(前編)
こんにちは、小野です。
今回は、ネットワークカメラ(IPカメラ)やビデオレコーダーに採用されるネットワークカメラのインタフェース規格“ONVIF”(Open Network Video Interface Forum)について、特集します。
こないだニュースで見たんですが、交差点の事故の原因特定に、防犯カメラの映像が決め手になったらしいんですよ。
最近はそういうのが本当に多いですね。事故だけじゃなく、ひったくりや不審者の追跡、置き引きの特定などでも、映像が手がかりになるケースが増えています。
映像が残っていると、「いつ・どこで・何が起きたか」が一気に具体的になりますもんね。人の記憶に基づいた目撃証言だけよりも、説得力が段違いというか。
その通りです。しかも最近は、街中だけではありません。工場や倉庫、建設現場、商業施設、オフィスなど、さまざまな場所で監視カメラの導入が進んでいます。防犯だけでなく、安全管理や業務の見える化にも使われています。
災害や事故などにいち早く対応できるよう、道路や河川とかでも導入されているらしいですよね。僕も散歩していると、ちらほら見かけるようになりました。
監視カメラにも種類があって、特に最近普及しつつあるのがネットワークカメラ(IPカメラ)です。イーサネットやWi Fiで接続してデジタルデータとして映像を伝送したり、記録装置のNVR(Network Video Recorder)やクラウドにデータを保存したりできます。
まさに現代的な監視カメラですね。AIも取り入れて人物検知や異常検知をやっているところもあります。でも、システムの構築って大変なんじゃないですか?監視カメラ、レコーダー、制御ソフト…まるまるぜーんぶ作っていくのは、なかなか大変な気が。
機器の仕様が違うとシステム統合や機器同士の連携に課題が生じます。しかし、これは過去の話です。現在では、機器同士が連携するための規格があるんです。
その1つが“ONVIF” (Open Network Video Interface Forum)というネットワークカメラの通信規格です。
ONVIF?そういった通信規格があるんですね、初めて聞きましたよ。
今まで当ブログでは、PCI ExpressやGigE Visionなど、データ伝送の規格を取り上げてきましたが、ネットワークカメラの通信規格は取り上げたことがありませんでした。今日はそんなONVIF対応をするとどんなことができるのかを説明しましょう!実は、OKIアイディエスはネットワークカメラのONVIF対応設計に初めて取り組んだ案件で、多くの課題に直面しながらも乗り越え、深い技術的知見を蓄積しました。
ONVIFとは?
大前提として、下図のような監視システムを考えてみましょう。LAN(イーサネットなど)で接続し、ネットワーク経由でPCやスマホのような管理端末や、録画サーバ等に映像を送って表示・記録します。

管理端末とネットワークカメラを接続するには、ネットワークカメラとの接続手順(通信プロトコル)や制御方法など、管理端末とネットワークカメラの間で取り決めが必要なのです。
だから、機器同士の連携が重要なんですね。ONVIFはその連携ができるよう取り決められた規格ってことですよね。
映像分野では、用途に応じて様々な規格が存在しています。通信・配信プロトコルの例を挙げると、次のようなものです。
- RTSP(Real Time Streaming Protocol):映像ストリーミングの制御。多くの監視カメラやVMS(Video Management System)で使用
- HTTP(HyperText Transfer Protocol):録画映像やライブ画像(MJPEG, HLS[HTTP Live Streaming])の配信。Webブラウザから視聴・取得
- WebRTC(Web Real-Time Communication):リアルタイム双方向映像通話。リモート会議/支援など
補足
- HLS:HTTPベースのメディアストリーミングプロトコル。動画ファイルを小さなセグメントに分割し、HTTPを使用して配信する。回線状況に応じて動的にビットレートを調整することで、動画の品質を調整することが可能になる。
- MJPEG:動画の各フレームをJPEG形式で圧縮することで、高品質な映像を保ちながらファイルサイズを縮小できる。これにより、リアルタイムストリーミングが可能になる。
これらを含む各種仕様を束ねて標準化し、機器同士を連携して運用できるように整備したのがONVIFです。カメラやVMS(Video Management System)など世界中の様々なメーカーがONVIFに対応することで、機器同士の接続性を確保するための規格です。
映像配信に使用される通信プロトコルおよびビデオコーデックを以下に記載します。

へぇ、プロトコルまで関係してくるんですね。これに準じた機器同士なら接続しやすいし、将来新しい機器を導入しても安心して使えます。まさにメーカーを超えて接続を支える業界の縁の下の力持ちですね。
ONVIFの概要とメリット
世界中で広く採用されつつあるONVIF規格ですが、対応しているとどんなことができるんですか?
ONVIF対応製品は少なくとも1つ以上のONVIFプロファイルを満たしている必要があります。対応するプロファイルによって、できることが変わるんですよ。
主要なプロファイルがいくつかあります。下に例を挙げますね。機能が増えればその分、複数のプロファイルに対応するための開発が必要になります。
| 種別 |
説明 |
| Profile S |
- ライブ映像ストリーミング向け
- 映像・音声の通信、PTZ (Pan, Tilt, Zoom) 機能などの定義
- 2012年に標準化
|
| Profile G |
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| Profile T |
- Profile Sの拡張
- メタデータ(物体検出、エリア設定など)サポート、ハイエンド映像圧縮(H.265等)
- 2018年に標準化
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| Profile M |
- AI/IoT連携、メタデータの標準化
- 2021年に標準化
|
他にもアクセス制御やイベント管理などの領域もあります。上記の中でベースになるのが“Profile S”です。ONVIFには、用途別の“プロファイル”という形で、どの領域のどの機能まで規格で保証するか明確に区分されています。
色々あるんですね。ん?よく見ると、プロファイルによって標準化された年が違いますよね。年々アップデートされているんですか?
そうです。ONVIFは2008年の設立以来、機器の性能の向上に伴い、アップデートで新しいプロファイルが追加されています。ここら辺でONVIFに対応するメリットをまとめておきましょうか。
| メリット |
説明 |
| マルチベンダー機器の互換性確保 |
異なるメーカー間でもネットワークカメラや録画装置が相互接続・利用しやすい |
| システムの柔軟な拡張 |
新しいONVIF対応機器の将来的な導入が容易になる |
| トータルコストの削減 |
機器固有の特殊設定を減らし、導入・設置・運用の手間やコストを低減 |
| システム構成・管理の標準化 |
機器の設定や運用手順が標準化されており、
システム全体の管理が簡単に
|
| 長期運用と将来の安心感 |
今後登場する新しいONVIF対応機器も含めて、
システムの継続運用や機器入れ替えがしやすい
|
ONVIFに対応していれば、機器の接続性、互換性のおかげで将来的な機器の導入や入れ替えの選択肢が広がり、かつ長期的な運用もできる。ONVIFってすごいんですね!普及もどんどん進みそうじゃないですか。
実際に市場の監視カメラメーカーの多くはONVIFに加盟しており、新しい機種の多くがONVIFに対応しています。専門メディアや調査会社の調査によれば、「2020年代以降、市場に投入された監視カメラの70~80%がONVIFに対応している」という見解もあるんですよ。
そんなに?!もはやONVIF対応していないことが、デメリットになっていくのでは…。ONVIF対応していないということは、機器同士の連携が難しくなるし、導入も運用も複雑になっていくんじゃ…?
そうです、ONVIFはもはや事実上の標準、つまり“デファクトスタンダード”となっています。今後のネットワーク監視カメラ開発において、ONVIF対応は避けては通れないのです!
ONVIF認証と取得の流れ
ONVIF規格に対応するには、さっきのプロファイルの要件を満たす設計をすればいいんですよね。
具体的には、ソフトウェアへ実装するONVIFコマンドの定義ファイルを作成します。実装には仕様書が必要になります。OKIアイディエスはこのコマンドの実装を行っています。
どんな仕様が必要になるんですか?
プロファイルによって違いもありそうですね。
このあたりの説明は長くなってしまうのでまたの機会に…。ONVIF認証を得るためには、「プロファイルの要件を満たす設計をすれば終わり」ではありませんよ。ONVIF公式の認証取得制度があり、さらにONVIF団体メンバーであることも必要です。
ONVIFコマンドの定義ファイルも気になるところですが、制度まであるんですか?プロファイルの要件を満たす設計やソフトウェアの実装の先に、まだやるべきことがあるってことですね。
どんな流れで認証を受けるんでしょう?
まずは、プロファイルに沿って設計し、ソフトウェアを実装します。プロファイルごとに定められた仕様だけでなくONVIFコア仕様にも準拠していることが必要です。
ONVIFコア仕様というのはONVIF全体の設計や、基本のWebサービス技術(SOAP/HTTP/XML通信など)といった、ONVIFのベースとなる部分の仕様のことです。
なるほど。その部分はどんなプロファイルでも共通なんですね。プロファイル固有の設定項目ってどんなものがあるんですか?
たとえばサービス仕様や機能要件です。認証を受ける上での準拠テスト仕様も関係してきます。さらに、WSDL(Web Service Definition Language)と呼ばれるAPI定義、XSD(XML Schema Definition language)というXML形式のスキーマファイルに準拠する必要があります。
色々いっぱいありそうですね…。
ともあれこういったものを一通り実装しておく必要があるんですね。
実装が完了したらONVIF Test Toolを使用してプロファイルに対応した適合性テストを実施します。このテストツールはONVIF公式サイトから提供されていますよ。テストをPASSしたら、次はテストログを整備してONVIF事務局へ申請して審査してもらいます。審査が完了したら、初めてONVIF対応したと公式に認められます。
補足
- XML(eXtensible Markup Language):データを文字(テキスト)で構造化して表すための形式
- SOAP(Simple Object Access Protocol):XML形式のメッセージでリクエスト/レスポンスをやり取りするためのプロトコル
- WSDL(Web Service Definition Language):SOAPで提供するWebサービスのインタフェース定義(API定義)をXML形式で書いたもの
ONVIFのシーケンス
ONVIFのプロファイルの要件を満たすように設計された機材を接続すれば、IPカメラへ命令が送られて記録が開始できそうですが、注意点はないんですか?
確かにユーザーから見たら、もう準備万端に見えます。が、機器同士を物理的に接続したら、クライアント側からデバイス側へ命令を送り、応答を受け取る仕組み(手順)を確立する必要があります。
機器同士の間で、何かしら通信が行われているってことですね。
OK!下記は、IPカメラ(デバイス)とクライアント(ユーザー側)の通信シーケンス例です。

基本的に、クライアント側からの要求に応じて、デバイス側が応答を返す流れです。まず初めに、クライアントから、DeviceDiscoveryコマンドにより、ネットワーク上に存在するONVIFデバイスを検索します
まずはクライアント側からネットワーク上のデバイスを探すところから、ですね。クライアントからデバイスへのアクセスのためにはIDとパスワードによる認証が必要なんですね。
そうです。ちゃんと正しいデバイスに接続するためにも認証が必要なんです。さて、認証ができたら、クライアントは、デバイスが持つ機能、たとえば配信ストリーム数やPTZの有無などを知るために、GetCapabilitiesコマンドにより、デバイスの機能情報を取得します。
PTZはPan, Tilt, Zoomのことです。
ズームしかわかんないですよ。PanとTiltはどんな意味です?
Panは「左右に振る」、Tiltは「上下に振る」という意味です。そしてZoomは「拡大する」という意味です。ネットワークカメラにこれらの動作をさせるための共通仕様がPTZです。
PTZはネットワークカメラの画角や向きを変えたり、移動させたりするのに必要な仕様という感じですね。ここで大事なのはデバイスの機能情報から何ができるのか、クライアントが知っておくってことか。
そして晴れて、クライアントはデバイスに対して、ストリーム配信要求を行えるようになります。つまり、「配信開始せよ!」っていう命令を送るのです。
接続先の機器を確認、機器の機能・設定を確認、そして撮影開始という流れがきっちり決まっているんだな、とわかりました。
映像配信の設定としては、「FHDストリーム」「HDストリーム」や「低画質ストリーム」など、複数用意されている場合が多いです。次のフローは、ストリーミング開始からPTZ制御を行うフローです。

まず、クライアントは、GetProfilesコマンドにより、ビデオストリームの解像度やコーデックの組合せなどの、プロファイル情報をデバイスから取得します。続いてクライアントは、GetStreamUriコマンドで、実際に再生に使うストリームのURLを取得します。
そしたら、そのURLを使ってIPカメラから映像・音声の配信が行われる流れなんですね。PTZの制御をする場合もクライアント側からできるんですよね。
はい、カメラのPTZ操作が可能な場合は、PTZ制御用の情報(設定値やコントロールポイント)に従い、PTZ指示を行います。
最後に
一区切りつきましたし今日はこのくらいがちょうどいいですよ。(ボスの説明は長いので…。)
では、今日のおさらいです。いいですか、ONVIFは、今後のネットワークカメラに必要な規格ってことを覚えておいてくださいね。
- ONVIFはネットワークカメラの通信における業界標準規格
- ONVIFはプロファイルごとに対応機能が分かれていて年々機能が追加されている
- ONVIF規格に対応することで機器の互換性が高まり、将来のシステム拡張や機材の入れ替えが簡単に
- ONVIF認証取得には、公式テストと審査に合格する必要がある
おさらいをありがとうございます。あと、通信の流れもちょっと理解できましたよ。
まだ「ちょっと」しか分かってもらえてないし、次回はONVIFの実装について、もっと深く掘り下げて語ります。OKIアイディエスがどんなONVIF設計を手掛けているのかも、詳しく説明しますよ。
さっき言っていたONVIFコマンドの定義ファイルの実装のポイントとか、とても気になりますよ。
さらに、当社でのONVIFの設計事例も紹介しますね。ネタを仕込んでいますからぜひ期待してください!
ONVIFってこれまで馴染みがありませんでしたが、OKIアイディエスの新しい設計サービスとして、私も目が離せません。
今後の展開に期待ですね。
ONVIF対応製品の開発やシステム構築に携わるすべての皆さん、ONVIF対応の際には、OKIアイディエスにぜひお声がけください!
次回のブログ更新は2026年4月を
予定しています。お楽しみに!
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